PW

PW　行ってみました。

　――２０世紀の話――

○月×日
夜勤のバイトを終えて、帰路に着く。
私にこのバイトを紹介してくれ、同じ学校に通うAがついてきた。今日の学校は１０時から大講堂での１科目のみ、同じ授業を取っている学友が、時間まで私のアパートで寝かせて欲しいとのこと。
二人で地下鉄のホームに降り、下りの始発電車を待っていた。
と、Aがなにやらゴソゴソと、１０cmほどの紐の付いた黒いペンケースのようなものを取り出した。
「あぁ、やっぱ地下はだめなんだな・・・」
「？、なにそれ？」
「ピッチ」
「おお～、携帯電話か」
「携帯じゃね～よ。PHS」
「？？？。ふ～ん・・・」
くだらない会話をしていると、電車は地表に出て多摩川を渡る。
太陽が黄色いのが腹立たしかったが、窓越しの光に、将来のためと言い張って早めに手を加えることを止めた頭髪が温まってゆくのは、そう悪い気はしなかった。
アパートのある駅を降り、途中コンビニに寄り不味い弁当を買う。部屋に着き、弁当をもさもさと食べて、２～３時間の惰眠を貪る。場所を大講堂に変え、惰眠を貪る。
「おい。ノクチで昼飯食わしてやるから、電器屋つきあえ。あそこ携帯おいてあったよな？」
「っは・・・お、おう」
授業が終わったらしい。
再び東急線に乗り、溝口に向かう。電車を降りると、駅前だというのに車一台がやっと通れるほどの狭い道に、これでもかというくらい大量の不法駐輪の群が目に飛び込んでくる。
中国かよここは。などと悪態を吐きながら、列（決して整然と並んでいるわけではないのだが）からはみ出した籠や後輪を避けて、ラーメン屋に向かう。
学校のあるあたりは、２kmほどの桜並木をチェリーロードと呼んだり、１００ｍおきによく手入れされた公園があったり、そのあたりに住む奥様はアザミノーゼと呼ばれたりと、なんだか居心地が悪い。性根の下品な我々の足が、カオスに富んだ溝口に向くのは、自然の成り行きだった。
可も無く不可も無いラーメンを啜った後、電器屋に向かう。

○月△日
「お～、これが噂のうぃんどぅず！」
先日衝動買いしたノートパソコンをBが見に来た。
「いやWindowsはOS」
「いんたーねっととかできるんでしょ？」
「契約してないからできんよ」
「メールは？」
「同じ」
「じゃあワープロじゃん」
「・・・」
説明は後でAに任せて、スイッチを入れる。
画面いっぱいのNECのロゴの後、４色の旗と９８の文字が不敵に揺れる。約２分の沈黙。
ワードとかを立ち上げると面倒そうなので、エクセルを立ち上げる。
「いじってみ」
「ん」
Bは真新しいおもちゃを与えられた子供のように、実際そうなのだが、目を輝かせてキーボードを叩いていた。
「あれー？」
暫くして、Bが奇声を上げた。
どうやらフリーズしたらしい。

１、画面に明朝体の見づらい文字で「このプログラムは～・・・」
２、青、青青青、ｽﾃｷに青。
３、パワーボタン長押し。
４、再起動、エラーチェック。

以降３時間ほど１～４の作業をくりかえす。


そんなことがあり、ごめんなさい。
あのフォントだけはダメでした。
キャラ作成してちょっと入って、すぐに止めてしまった。